バルセロナ戦 レビュー前半
- たこす。
- 2019年12月6日
- 読了時間: 7分
バルセロナ戦 レビュー前半
両チームのスタメンはこれ⬇️⬇️⬇️⬇️⬇️⬇️
アトレティコは左サイドバックにロディではなくサウールを使う奇策を披露し、右サイドハーフにはコレアを起用しました。
バルセロナは怪我のアルバに変わってジュニオール、また累積による出場停止のブスケツの代わりに、ビダルではなくラキティッチをアンカーとして起用しました。
それぞれ狙いを考えてみたいと思いますが、まず、サウールのラテラル起用ですが、これは自分にはどれだけ考えても意味がわかりません
ロディの対人守備が不安だからメッシ対策でサウールを置くかー
くらいの考えなのかもしれませんが、結果としては駄策もいい所でしたね。問題点は後で具体的に考えてみたいと思います。
そして、コレアの右サイドハーフ起用ですが、これまでのバルセロナ戦は相手の強みであるジョルディアルバへの対応として、コケかサウールをマンマークさせるような形での右サイド起用が多くなっていました。が、今回の対戦ではそのアルバがおらず、今回のスタメンの中では穴といえるジュニオールに対して、守備面での貢献も期待でき、今1番攻守に安定しているアタッカーであるコレアを使ったのだと思います。
この起用策の結果についても流れの中で触れてみたいと思います。
そしてアンカーにデ・ヨングでもなくビダルでもなくラキティッチが起用されたことについてですが、一昨年のバルセロナ対アトレティコを覚えている方は思い出して頂きたいのですが、バルセロナが途中から起用したパウリーニョを起点にバルセロナが押し切った試合がありました。バルサの中盤の中で1番フィジカルで優位が取れるビダルをかつてジョーカーとして起用されたパウリーニョのように起用したかったのかな、と個人的にはひとつ思い当たりました(普段から見ている訳では無いので自信はありませんが)
また、デ・ヨングのアンカー起用に関しては今期あまり成績が良くないということで回避したと思われます(多分、中盤の底で構えるのではなく動きすぎるから上手くいかないのだと思いますが)
では試合に入りたいと思います。
試合はアトレティコが高いインテンシティを持って入り、序盤はアトレティコがバルセロナを圧倒します。
その中でコーナーキックの流れからエルモソにチャンスが2回訪れますが、2回とも決めきれず、さらにはモラタにもチャンスが訪れますがこれもまた決められずに、アトレティコが優勢ではあるものの、スコアレスなままで前半が終わります。
前半で見られたいくつかの狙いについて考えてみたいと思います。
①セットプレー
アトレティコはここ1ヶ月以上エルモソ、フェリペのコンビで試合を続けている訳ですが、セットプレーのターゲットとして目立っているのはもっぱらフェリペで、エルモソはあまり目立っていませんでした。バルセロナ戦もゴール前中央でフェリペが競る形が多く、前半16分にはトリッピアのフリーキックでフェリペにもチャンスが訪れていました。一方のエルモソですが、この試合はファーサイドにポジションをとるあるいは中央からファーサイドに開いていくプレーが多く見られました。エルモソに訪れた2つの決定機は共にファーサイドでのものでしたし、2つ目の決定機はエルモソのファーサイドへの動き出しとフェリックスのピンポイントのクロスが完璧に合ったものでした(だからこそきめ切りたかった)
そして、このようにファーサイドへのボールも有効的に使ったことは、モラタがゴール前中央での決定機が訪れたことのひとつの要因となったと考えることも出来るでしょう。
②プレッシング
この試合前半に、エレーラとトーマスの2人だけでバルセロナの前半のインターセプト数と同じ5回のインターセプト数を記録しました(実況曰く)
これは、バルセロナのビルドアップの稚拙さを巧みにつき、ショートカウンターを狙ってのものでしたが、少なくとも前半に関していえば完璧に機能していたと言えるでしょう。
具体的には、GKのテア・シュテーゲンを含めた最終ラインから、中盤3枚(主にラキティッチ)にパスが入った時に人数をかけて奪いに行くというものでした。
バルセロナの中盤3枚はアトレティコのFW陣の裏、ブロックの前のスペースでボールを受けることを狙っていましたが、単に横並びの状態で受けることが多く、フォローが上手くできていなかったために、エレーラがトーマスが前に出て、インターセプトを狙う形が多く見られました。
上図はひこたさんからお借りしたものです
ここまで考察した、エレーラトーマスのインターセプトの狙いが最も顕著に現れたシーンで、テア・シュテーゲンからのパスをラキティッチが受けたところをエレーラが狙ってボール奪取、単独でフィニッシュまで持ち込んだシーンです。
この図を見ればわかるように、エレーラやトーマスの裏のスペースにはバルサの選手が入ってきておらず、そのために思い切って前に出ることが出来ていたと考えます。この動きは後半に入ると見られなくなってしまいますが、バルサ側の修正があったから、と考えることが出来るでしょう。
③アンヘルコレアの右サイドハーフ起用
今期ここまで攻守に存在感を見せているコレアをバルサ戦でも起用することは、普通に考えればそうおかしいことでも無いかもしれませんが、過去のバルサ戦では、サウールやコケが主に右サイドハーフのポジションを担っていました。
その理由がバルセロナの武器の1つであり、今回欠場していたジョルディアルバの存在でした。
メッシとの高い連携と、ジョルディアルバ自身の抜群の攻撃力を封じるべく守備面において信頼のおける2人がこれまでのバルサ戦では起用されていた訳ですが、今節はバルセロナの左ラテラルはジュニオールでした。
ジュニオールも決して悪い選手ではなく、ジョルディアルバよりもインナーラップなどの選択肢を持つ選手ではありますが、ビルドアップ時のミス、守備対応の杜撰さが指摘される選手でもあります。
前半に関して言えば、アンヘルコレアの右サイドハーフはある程度の成功を見たと言えるでしょう。今期守備が著しく上達しているコレアは、オーバーラップ後のプレーを大きく制限していましたし、武器である1級品のターンでエリア手前でファールを貰うなどの活躍は見せました。が、正直に言って、バルサの穴であったジュニオールを崩しきれた訳ではなく、その面では満点の評価を下すことは出来ないでしょう。
④ビルドアップ
先程バルセロナのビルドアップ時の問題とそこを突いたアトレティコのプレッシングについて考察しましたが、アトレティコは基本的には低い位置で無理をしてまでつなぐことをしません。
1つ目の特徴が、コケがセンターバックの横におりて3枚でビルドアップを行うことです。プレーリズムを作れるコケがボールに多く絡むことで、コケのいるサイドを中心に攻撃を組みたてます。
もうひとつの特徴が、サウールサイド起用時の恒例ではありますが、サウールのターゲット化です。この試合も基本的にはラテラルが高い位置まで上がり、幅を取っていました。また、中央でビルドアップを行う形が多くなります。
基本的にアトレティコはゴールキックから細かくボールをつなぐことはせずに前に蹴り出すことが多いですが、この時に左サイドで高い位置を取っているサウールにボールを当てることが多いです。いざと言う時にはセンターバックもこなすことが出来るサウールの、フィジカル面での高さ、強さを生かす戦術になります。基本的にサウールより大柄で空中戦に強いサイドバックの選手は多くないため(バルセロナもセルジロベルト)、ボールが収まることが多いです。つまり、サウールを高い位置に押し上げてボールを当てることで自陣低い位置でのボールロストという危険性を冒すことなくボールをハーフラインまで運ぶことができます。サウールがボールを収めてコケがそこに絡んでいくのがバルセロナ戦の基本的な形でした。
以上の4つが前半の狙いというか、アトレティコのプレーの特徴として挙げられるものだと思います。前半終了間際にピケに惜しいヘディングを浴びるなど危ないシーンもいくつかありましたが、前半の内容であれば、アトレティコ優位であったのは間違いないと思います。それだけに決めきれなかったことが悔やまれる前半であり、またスーパーセーブを連発したGKテア・シュテーゲンの活躍は素晴らしいものでした。
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